心に染み入る絵本 2

写真左は日本で初めにバレエを伝えた名バレリーナ、エリアナ・パヴロバである。

 

残念ながら妹のナデジタ・パヴロバの写真は持ち合わせがないので掲載できなかった。

 

写真上中央と右は故大滝愛子演出振り付けの子供のグランドバレエ「ピーターパン」の舞台写真であり、ピーターパンはなんと私、小倉佐知子自身である。この時私は12、3歳だったと記憶している。

 

従って、この2枚の写真は今から60年以上も昔の写真ということになる。

こうして遥か昔の写真を探し出し、幼いころの自分の写真をしげしげ見るのも何十年ぶりかのことであれば、ひどく懐かしく感慨深い。

 

何故この写真を掲載したかというと実は訳がある。

 

エリアナ・パブロバの妹のナデジタ・パブロバ(以後ナージャ先生)は大滝愛子先生とは交流があったので、リハーサルにもしばしば訪れてくださっていたのだ。

 

「ピーターパン」の本番をご覧になってとても感動してくださり、以後私のことを見る度に「オゥ、ピータパン!」と呼ばれたのである。

 

私は配役発表がなされた際に、自分が主役の”ピーターパン”でもあまり嬉しくはなかった。

ピーターパンは男の子の役だし、素敵な衣裳も期待できず、ティンカーベル役の子が羨ましかった記憶がある。

 

でも発表会以後は、ナージャ先生にとって私は佐知子ではなくピーターパンになったのだ。

今でも私を「ピータパン」と呼ばれた時の穏やかでにこやかなナージャ先生のお顔が眼にうかんでくる。

 

そのことは私にとってはこの上ない光栄な出来事であったので・・・やっぱりピーターパンに選ばれてよかった・・と後になって私にチャンスをくださった大滝愛子先生に感謝した思いが蘇る。

 

絵本、”すなはまのバレリーナ”を目にされた往年のバレリーナたちは、私のようにこの絵本から様々な懐かしいエピソードが蘇るとともに日本のバレエのルーツを改めて確認されていると思う。

 

”すなはまのバレリーナ” 様々な意味においても心に染み入る絵本である。