牧阿佐美 先生

私のバレエの恩師であり、全てにおいての尊敬の人であった牧阿佐美先生は10月20日に天国へ召された。

 

残念で悔しく哀しいが、阿佐美先生は最後まで諦めることなく病と向き合っての結果と素直に受け止めるしかない。

 

阿佐美先生との思い出は私にとってはどの思い出も印象深く、ドラマチックでさえあり、ここではとうてい語りつくせない。

 

語りつくせないというより、私と阿佐美先生との秘密に近い出来事も多々ある。

 

阿佐美先生は、偉大な芸術家であると同時に寛容で、とても魅力的な女性でもあった。

 

私は阿佐美先生とバレエの仕事で接している時には、毎度のように先生の的をついた教えやバレエ芸術へのセンスの良さに頭をうなだれるばかりであった。

 

現在の私のバレエでの知識は殆どが阿佐美先生から学び教えられた事といっても過言ではない。

 

その一方、一人の女性として私と過ごす時間帯での阿佐美先生はまるで少女のようなロマンを失わず、失礼な言い方を許していただければ

仕事を離れた時の先生は純粋に ”かわいい女” であった。

 

私も一人の女として見習わねば・・・と今までに何度も思って努力はしたのだが、どうも私には残念ながら”かわいい女”の素質はないらしい。

 

今、牧阿佐美バレエ団、日本のバレエ界は”牧阿佐美という大きな存在を失ったが、大きな存在が遺した芸術的財産もまた大きい。

 

残された者は、先生がバレエ団、バレエ界に遺されたかけがいのない芸術を受け継ぎ、守り、更には磨きをかけて阿佐美先生が目指した真のバレエ芸術に半歩づつでも近づけるべく、ベストを尽くしていかねばならない、と私は私自身に語り掛けている。

 

「牧阿佐美先生、本当にありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします」

 

<写真>

左上:牧阿佐美先生(場所、不明)

右上:ワガノワバレエ学校設立280周年記念公演に研修生が参加した際、ボリショイ劇場近くのレストラン前にて、中央=牧先生、右=永田元研修所主監、左=小倉

左下:AMステューデンツのリハーサルをみまもっての牧先生

右下:若きき日の「白鳥の湖」のオデット姫の牧先生