小さなレモンの鉢植えが我が家のベランダにきてから10年近くが経つ
木は年々順調に育ち、毎年7~8個の立派な実をつけてくれた
3年前には驚くほどの豊作で沢山の芳醇なレモンの実を収穫でき、私たちのの舌を潤わせてくれたばかりか親しい友人にまでプレゼントして喜ばれたものだ
しかしその後、レモンの木は害虫の攻撃に見舞われてあちこちの枝を切り落とす派目に陥り、2年間花はつけても実を結んで育つことは無かった
今年の春、木は所狭しと沢山の花を付け、実もつけたが小さな実は日ごとに次々と枝から離れていき、今年も実の収穫は見込めそうにもなく思えた
花木に詳しい友人は、レモンの木をしげしげと見回しながら私に
「先生、この木は今年も実はダメかもしれないわね、前に虫にやられちゃって2年も実がならなかったし・・・もし、今年も実をつけなかったら可哀想だけど廃棄処分にしましょうか・・・」
「え、捨てちゃうの?」
「実がならないレモンの木ではねー、まあもう少し様子見してから考えましょうね」
との会話がレモンの木に聞いこえのか?聞こえなかったのかは定かでないが、なんとその日から実は落ちなくなったばかりかみるみるしっかりと活きずいて色合いも良くなってきたのだ
友人と私は嬉しくなって
「”捨てる”て話されてレモンの木は頑張る気になったのかもね」
「レモン!頑張ってね、そしたら捨てないから・・」
雨が叩きつけ、陽が照りつけ、突風に見舞われる度に私は心配してレモンの青い実を見舞いにいく
青い実はほんの少しづつ育ちながら頑張って枝にしがみついている
捨てられないように
つややかな黄色に色づいたレモンの実を見られるのはまだ当分先のことである