「飛鳥」のこと(その2)

バレエは総合芸術と思っている。

 

様々なスタイルでの公演があるが多くはステージにおいての上演で、そこにはバレエ以外の技術や芸術が作品を支えると同時に作品の価値をも高めている。

 

今回の「飛鳥」ではアップステージいっぱいに設置された階段以外は小道具に類するものに留まり、物語の情景はすべて映像が装置の役目を果たすスタイルで行われた。

 

海外ではそこここで映像を用いての上演が行われているらしいが、牧阿佐美バレエ団ではここまで大規模なシステムでの映像とコラボした公演は初の試みであった。

 

振り付け者である牧先生を始めダンサー、私たちスタッフは大いなる期待と初の試みに対する不安とが交錯しながらも作品を完成すべく全力を尽くしてきた。

 

G.P当日、ステージいっぱいに動く絹谷氏の描いたカラフルで斬新な絵の映像と初めて向い合う。

 

そしてダンサーたちが登場し・・・主役の美しいルンキナやルスランが踊り演じ、ダイナミックに変化する映像と重なりながらドラマが展開されてゆく様を目にした時、私はこの試みが成功するであろう実感を得た。

 

人には好き好きがあるので、このような様式でのバレエを好まない人もいるに違いないが私はバレエも現代のめざましい進歩を遂げているハイテクに便乗して、このような公演があるのも楽しいと感じる。

 

古典と最先端のハイテク技術が上手にミックスして相乗効果を発揮できたなら、それは現代における芸術のロマンとも言えるのではないかと思う。

 

故橘秋子先生の遺作であり牧阿佐美先生渾身の力作とも言える”バレエ「飛鳥」”は、今までに経験したことのない新鮮な驚きと感動を私に与えてくれた。